巡回監査と月次決算

【1】月次巡回監査とは

巡回監査とは、関与先企業等を毎月1回以上及び決算時に訪問し、関与先企業等が起票した伝票及び当事務所が提供する財務計算システム(FX2)により入力されたデータについて、証憑書類等と照合して、適時に全ての取引が洩れなく起票又は入力されているか、会計基準・税法等に照らして適法にかつ正確に処理がなされているかを確認し、会計記録の適法性、正確性、適時性、整然明瞭性を確保することです。

私たちは、この月次巡回監査を、やむを得ない事情がない限り、毎月100%実践します。

【2】巡回監査の必要性

会計処理そして計算書類作成はあくまで自社の業績把握・分析等の業績管理・経営戦略に役立つものでなければならず、適切な経理体制の整備は、健全な企業の発展には不可欠な業務なのです。月次巡回監査は、具体的に次の5つの視点から必要です。

1. 帳簿の証拠能力の確保

 企業が自らの業務の通常の過程において作成した会計帳簿はその証拠能力を有します(刑事訴訟法第323条)。また、わが国の税法は、帳簿の範囲や帳簿記載の条件を詳しく定め、これが遵守されており、計算の誤り等がなければ、税務当局はこれを認める法制となっています(所得税法代155条、法人税法第130条)。証拠能力の確保と税務当局による是認義務の法理の観点から、関与先が記帳した帳簿が高い証拠能力を保持できるように指導するためにも、巡回監査は不可欠なのです。

2. 会社法等に準拠した適正な会計処理の実施

 適正な計算書類の作成は企業の社会的信頼性の向上を図るための重要な責務であり、会社法は「株式会社は適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」(会社法第432条)と適時かつ正確な会計帳簿の作成を義務付けています。従って、会社法等に準拠した適正な会計処理の実施の観点から、請求書・領収書等の証憑書類を整然と整理・保存し、日々現金を管理して会計帳簿を作成することは大変重要なことです。

適正な会計帳簿及び計算書類作成の本来的な意義に基づいて指導を行うためには巡回監査が不可欠なのです。
3. 関与先への会計指導と経理担当者等の育成のため

 中小企業の場合は経理担当者に専門的な知識を有する者が少なく、会社法等に準拠した適正な会計処理の実施することは困難である場合が多く見られます。正しい起票(入力)の仕方、起票(入力)洩れの発見、不足している伝票の起票(入力)、誤り伝票の再起票(入力)、消費税法への対応等に係る指導や助言、そして関与先の経理担当者の指導育成や内部統制指導等の業務は、月次巡回監査を通じてこそ果たすことができます
4. 関与先への経営助言のため

 多くの中小企業の経営者は、会計事務所に「経営の意思決定に役立つタイムリーな情報提供」を求めています。そのニーズに応えるためには、現場の生の声を聞き、現場を自分の目で見ることによって、仕訳には表れない関与先の実状を的確に把握しておく必要があります。財務データの正確性を確保し、かつそれをタイムリーな経営情報として関与先に伝えるためには、月次巡回監査が必要です。
 また、経営者の皆さまが掲げる経営目標や経営戦略において、私たちが利益計画の策定、分析・改善等の業績管理に関して助言業務を展開するためには、その基礎となる会計データがいい加減なものであってはならず、経営計画策定や業績検討会の実施は何ら意味を持たず、論外です。月次巡回監査は不可欠です。
5. 税理士法からの私たちの責務

 税理士法は「真正の事実」を確保するために私たちに「相当注意義務」を果たすことを課しています。これを正しく充足するには、関与先企業から会計事務所への会計資料の持参を常態とすることは避けねばなりません。なぜなら、関与先企業が持参する会計資料に対して質又は量の面で不当に限定される可能性があり、「真正の事実」に基づいた適正な決算及び申告業務を果たすことは困難であるからです。
 従って、真正の事実を確保するためには、会計資料等が全てが備置された関与先を訪問し、事情の確認等も含めて巡回監査を行わなければならないのです。私たち税理士の最も重要な責務なのです。

【3】月次決算の実施

(1)月次決算の必要性

月次決算とは、本決算と同様に毎月の業績を把握し、経営管理の為に毎月実施する決算のことをいいます。月次決算の実施は、次に掲げる理由から当然に必要となります。

  1. 毎月の損益状況、財産・負債状況、資金繰り状況が明確に把握することで、経営者が問題点を発見し、迅速に改善に向けた対策を講じることができる。
  2. 年初に策定した経営計画書の目標値と実績を毎月比較することにより、達成度合い、差異の把握、異常値のチェックができ、迅速に対応できる。
  3. 金融機関から最新の業績データの提出を求められても直ちに対応できることで、金融機関の信頼に応えられ、融資交渉等に役立つ。
  4. 月次決算を行うことで、適切な経理体制が構築され、会計処理の誤り等を早期に発見でき、年次決算が容易になる。

(2)月次決算の実施

私たちは「月次巡回監査」と「月次決算」を基本業務としております。
毎月、貴社を巡回監査し、会計資料や会計記録の適法性と正確性を確保しながら、スピーディに月次決算を行い、正確かつスピーディに月次決算を行い、最新の経営成績と財政状態を報告しています。

月次決算の精度を高めるには、

  1. 売上・仕入・経費等の計上は締後計上を含め、発生主義で処理すること。
  2. 毎月末に実地たな卸しを行って月末たな卸高(月次概算棚卸高)を計上すること。
  3. 減価償却費(月次概算額)を計上していること。
  4. 賞与の引当ても月割りで計上されていること。
  5. 消費税については税抜処理方式で処理していること。


が必要不可欠です。
これらの処理が行われていなければ、本来の正確な実績とはかけ離れた数字が生じ、誤った経営判断をしてしまうことになりかねません。

私たちは、毎年お客様に助言協力しながら経営計画を策定して、月次の実績データと予算を比較検討を巡回監査時に行います。その過程で改善すべき事項や問題点を洗い出し、経営者の皆さまの経営戦略にお役に立てるよう努めております。
正確な月次決算を実施して初めて、適切な計画策定・経営助言・業績分析等が行われるのです。月次決算は大変重要な経営者の責務なのです。

【4】証憑書類の重要性

(1)証憑書類とは

証憑書類とは、外部取引、内部取引に関して作成される取引証拠書類を言います。取引の内容が記載されており、その取引の発生を証明する書類のことです。
勿論、証憑書類それ自体が真実なものでなければならないことは当然で、虚偽や不正のものであっては、全く証拠書類はありません。
会社法が求める正確な会計帳簿は、真実の証憑書類に基づいて取引の事実の認定を行い、これに健全な会計慣行及び企業会計法令適用による会計上の判断を要件として記録されなければならないのです。

また、証憑書類は、取引に関する紛争等が起きた時にその証拠となる書類でもあります。

(2)証憑書類は整然と明瞭に

取引先から受け取った又は企業が作成した証憑書類は、整然と明瞭に日々整理・保存しておく必要があります。
会計記録の秩序性,明瞭性ともあいまって,全ての取引記録について,その証憑書類にまで容易にさかのぼることができ,あるいは逆にその証憑書類から最終記録金額,集計金額まで容易に追跡することができるようにしなければなりません。
各帳簿への記載と証憑書類の相互関係が明らかにし、記帳の証憑書類が整然と保管されていることが、その取引の実在性と記録の正確さを第三者に納得させることができるのです。

以下に私たちが指導する主な証憑書類の整理・保存の仕方について掲載しておきます。

【5】現金管理の重要性

(1)現金管理の重要性

 経理の基本は現金の管理であり、それがどの程度きちんと行われているかによって、その企業の経理体制の水準が分かるとさえ言われてます。

 1. ポイント1 -企業と個人の現金の厳格な区別―

 現金管理について最も重要すべきことは、法人の現金と個人の現金(個人事業者の場合はお店の現金と家計に係る現金)とを明確に区分することです。そのためには、法人の現金は金庫に、個人の現金は個人の財布や金庫にと、保管場所を分けることが必要です。

 2. ポイント2 ―小口現金制度の採用―

 大口の現金が手許に残るような関与先の場合は、大口の現金と別にして、日常的に小額で頻度の高い経費の支払いについて、使途と1回当たりの支払金額を限定して出納管理を行う小口現金制度が活用しましょう。この場合、小口現金出納帳を別途用意し、特定の小口支出に限りこの小口現金から支払うようにします。小口現金については、例えば標準的な残高をあらかじめ決めておき、その残高を下回ったら大口の現金から出金処理をして補充します。

 3. ポイント3 -不要な現金の動きを極力減らすー

 売上代金や売掛金の現金回収額が多い場合には、それを直接経費の支払いに充てないで、その金額をそのまま当日あるいは翌日に自社の預金口座へ預け入れるようにしましょう。このようにすると日々の現金の動き(入出金)が明確に区分され、現金の帳簿残高と実際有高との原因不明の不一致を防ぐことができます。

 4. ポイント4 -日々の現金有高確認の励行―

 1日1回、必ず手許現金を金種ごとに数え、金種ごとの員数とその金額、並びにその合計額とを「金種票」に記入し、然る後にその時点における現金の帳簿残高と一致しているかどうかを必ず確認させます

(2)出納帳記入のポイント

 1. 現金は実際の入出金した日で記帳又は入力します。

  イ 現金出納帳への記帳は、現金を実際に出金した日・入金された日で記帳又は入力します。領収書日付で記帳すると、精算のタイミングにより現金出納帳の残高と実際の現金残高が一致しなくなるケースが生じます。

  ロ その際、出納帳摘要欄に領収書日付をメモ書きします。

 2. 残高は必ず記帳又は入力確認すること。

  イ 一日分の入出金取引が終了した段階で、差引残高欄に残高を記入し、実際の現金有高と照合し一致しているかを確認します。この作業を毎日行うことが現金出納を管理する際の基本です。

  ロ 現金有高を計算する場合には金種表を利用する。

 3. 手提げ金庫を用意すること

 4. 現金が合わないとき

  イ 現金有高と現金出納帳残高が合わないときは、不一致の原因を調査し、すぐに追求するようにします。原因としては次のようなことが考えられます。
     ・現金出納帳での桁誤り、転記誤りなどの記入ミス

     ・現金出納帳への記入漏れ

     ・現金の精算誤り

  ロ 原因が追及できない場合には、「現金過不足」勘定で記帳します。自分のポケットマネーで処理することは絶対にやってはいけない。

  ハ 決算期まで「現金過不足」勘定が残っているときは、雑損失・雑収入に振替し、処理します。

(3)仮払金・立替金について

 1. 立替・仮払いの精算はできるだけ速やかに行うことが原則。

  イ これがルーズになると、経理がルーズになります。

  ロ 精算定期日を決める、締切日を設ける、精算されない場合は給料から天引する、あるいは仮払いを支払わないようにするなど、社内で工夫をする。

 2. 仮払金を出金するとき

   仮払目的、仮払金額、申請人の記入・押印を記入した仮払金請求書を提出してもらい、これと引き換えに仮払金を手渡しようにする。出金したら現金出納帳に記入します。

 3. 仮払金の精算をするとき

  イ 申請人本人から仮払金精算書を提出させます。仮払金精算書をあらかじめ用意しておくようにします。

  ロ 精算時の現金出納帳の記帳又は入力方法
精算するときは、支払った仮払金を一度入金をして、その後改めて支払った方法をとる。従って、仮払金の入金の記帳又は入力をした後に支払の記帳又は入力を改めて行うようにします。精算したら、現金出納帳の仮払金額欄に精算済みの印を記入しておきます。

 4. 立替処理(会社の費用を役員・従業員等が立て替えて支払った出金)

  イ 現金出納帳の日付は精算した日付で記帳又は入力するようにします

  ロ 摘要欄に支払日(領収日)を記入するようにします。

  ハ 一週間・10日、1月に1度などと日を決めて精算するようにします。

  ニ 立替金が多く、会社にお金がなくて全部精算できないときは、一時的に借入金で処理し、後日精算するようにする。

(4)その他の留意事項

 1. 手持現金を多くおかないようにすること。「小口現金制度」を採用し、定期的に補充する。

 2. 金銭出納業務の担当責任者を決めておくこと。
   出納責任者以外の者は、例え社長といえども現金の受払を行わない。

 3. 支払事務作業を軽減する

  イ 支払締め日・支払日の決定、小切手・銀行振込払い・総合振込、自動引落し等を利用する。

  ロ 自動引落(電話料金、電力料金、水道料、ガス料、リース料、家賃・駐車料、保険料、ガソリン代など)

  ハ プリペイドカードを利用すると、カード購入時の領収書だけの処理でよいから手間が省け、事務負担も軽減できます。(テレホンカード・オレンジカード・ハイウェイカードなど)

 4. 会社と個人の現金の区別-重要-

  イ 小会社は、法人・個人を問わず、とかく「どんぶり勘定」になりがちです。その原因の多くは、経営者への報酬や給与の支払方法にあります。

  ロ 「カネがある時に自由に取る」という習慣をなくすこと。

  ハ 従業員の給与と同じように毎月・支給日に・決められた支給額を払うようにする。資金がなかったら借り、会社と個人の現金の区別をつけることが何より大事。

  二 会社と経営者との給与以外の貸借関係は、必ず記録し管理すること。

 5. その他

  イ 売上は原則として全額を預金させる。

  ロ 旅費精算など精算時に困らないように、1円・5円・10円等の硬貨を用意しておくこと。

    ・硬化不足も「現金過不足」が発生する理由の一つ。

    ・社内での両替は行わないようにする。なぜならば、両替は出納担当者の業務を増やし、ミスの発生にもつながるから。

  ハ 帳簿締め切り後の取引は、翌日・翌月(決算日は終了時間まで)の処理とする。

  二 経営者は、決算期末のほか随時に現金の実査を行うべきです。

(参考)証憑書類の整理・保存方法

【1】証憑書類の整理・保存の基本~証憑書類への証第  号印の押印~

証憑書類には証第  号印をその右下部に押印します。証第  号番号が則会計伝票の「証憑書番号」欄に記入されると、取引記録の検証可能性(追跡可能性)が完全に確保されます。
 証第  号の付番の仕方は、証憑書類の種類ごとに番号を決めてこれを親番号とし、月毎に1から順次取引の発生順に枝番を付番します。
 例えば、売上請求書控の親番号が30とあれば証第30-1号証第30-2号‥‥‥となり、当座小切手控の親番号が10であれば、証第10-1号証第10-2号‥‥‥となるのです。
 預金通帳のように前期から二期以上にわたる場合には、必要により前期以前の枝番を踏襲し、必要事項を記録して置くとよいでしょう。

【2】主な証憑書類の整理・保存方法

1)領収書の役割と記載事項

 1. 領収証の役割

  イ 債務を弁済したことの証拠 → 代金を支払ったことを明確にするという役割

  ロ 二重の支払いを請求されることを防止 → 支払済み代金について再度請求されることを防止

 2. 領収書の記載事項

  イ 日付 ロ 宛名 ハ 受領者 ニ 金額 ホ 但し書き ⇒ 5項目は最低限必要

  ※「二重の支払いの請求防止」という観点から、宛名と但し書きの書き方には注意

 3. 領収証を書き損じた場合

   無効になった領収証の控が何の処理もされないまま残っている場合、税務調査では現金売上計上漏れとか領収証の二重発行とか不信感を与えかねないので注意しましょう。

  この場合は、領収証の「正」と「控」どちらにも大きく朱で×を付けて無効と記し、「正」と「控」を一緒にホッチキス留めします。なお、消印済みの印紙が既に貼ってある場合には、その印紙も無効になってしまうので注意(印紙税の還付有)。

 4. 領収証を再発行する場合の注意点

   「再発行」と朱書きすること。

   ※ 事業年度ごとに通し番号を付け、領収証を再発行した請求書については請求書の控と領収証の控をホチキス留めしておくなどの処理が必要です。

 5. 「但し書き」の書き方

  イ 「二重の支払いの請求防止」のため、売上代金回収に翌月末日回収とか15日締め翌月25日回収といったような一定の基準がある場合には、但し書きに「××月分売上代金回収分として」といったように明記する。精算の済んでいるものと精算の済んでいないものを請求書と領収証の二つの書類から立証できる。

  ロ 小口経費の領収証であっても、「品代」と但し書きをせず、飲食費関連であれば打合わせ会議費代会食代として、図書教育費であれば参考図書代、新聞購読代、雑誌購読代として、といったように取引内容や商品名、その場の状況が具体的に記入されていること。

2)領収書の整理・保存

(1)領収書は、必ず台紙に貼り付けすること。

  1. 領収書は一枚一枚日付順に証憑書類綴に糊付けして月ごとに綴るという方法が一般的です。

  2. 台紙はスクラップブックを使用します。証憑類が散逸しないように、日付順、発生順等に月ごとに整理保管します。

  3. 貼付の方法は日付順にページの最下段より左端に貼りつけます。

  4. 証第  号の押印やチェックを考慮して、適度の隙間を於いて貼りつける。

  5. 月ごとに、ページを新しくすること。

(2)領収書をもらう習慣を身につけること。

  1. 取引が生じたら書類を残すようにして下さい。

  2. 支払の際には、領収書をもらう習慣を身につけるようにすること。

  3. 領収書をもらうときは、「上様」ではなく会社名を記入してもらうようにする。

(3)領収書に取引内容がわかるようにメモをしておくこと。

  1. 領収書・レシートには、内容などについてメモすること。

  2. 小切手支払、手形支払等と記入しておくとよい。

  3. 勘定科目がわかっていれば書いておくようにする。

  4. 飲食費の場合は交際費、会議費、厚生費かの判断を要することから、勘定科目を決定できるように領収書に、「飲食目的、接待先、人員」などを書いておきます。

(4)領収書の無い経費は、出金伝票に取引内容を記入すること。

  1. 旅費交通費、公衆電話代、お祝金、香典など領収書の入手できないものは、支払証明書に支払先、支払月日、内容などを記入しておきます。

  2. 結婚式の案内状、葬儀のはがき等も捨てないで領収書と同じように証憑として保管します。

  3. 日常の旅費精算書の必要なものは全て作成し、週1回とか一定の精算日を社内で決めて精算します。

(3)領収書(控)の整理・保存

(1)領収書はできるだけ複写式のものを使うようにします

(2)領収書の管理

  1. 領収書の表紙にあらかじめ通し番号を付けてから使用すること。

  2. 表紙には使用開始日付:終了日付を記入し保存します。

  3. 複数の人が領収書を持って使用する場合、何番の領収書がいつ誰に渡されたのかを管理する「領収書管理ノート」に記録し管理するとよい。

  4. 領収書用紙にも、あらかじめナンバーリング器を利用し、一連の通し番号を付け使用すること。

  5. 書き損じ領収書は、斜線を引きその理由を書いて控えに付けそのまま保管すること。

(3)消費税法の必要記載事項は明記すること

  1. 領収の発行に際しては、「相手得意先名」「取引年月日」「取引内容」「取引金額(税込金額)」「発行社名(当社名)」の五項目が、領収書を受領する相手先が消費税法上の仕入税額控除の適用を受けるための必死記載事項であります。

  2. 税込取引金額が3万円以上の場合は、「上様」領収書や品名が書かれていない領収書では、得意先で仕入税額控除が受けられなくなります。

(4)印紙税の添付

  1. 現金は実際の入出金した日で記帳又は入力します。

   イ 記載金額が3万円以上の領収書を発行するときは、収入印紙の貼付を忘れないようにする。

   ロ 領収書に本体価格と消費税額に区分されている場合は、税抜金額に見合う印紙を貼ります。

   ハ 領収書に本体価格と消費税額に区分されていない場合は、税込金額に見合う印紙を貼ります

  2. 売掛金と買掛金を相殺する場合は、印紙税の貼付は不要です。

  3. 「仮領収書」の場合でも収入印紙は必要です。

4)請求書の整理・保存

(1)送付されてくる請求書等を一時保管する封筒やファイルを用意します。

  1. 送られてきた請求書等は、一時保管する封筒やファイルなどを用意し保管します。すべてこの封筒やファイルにいれて保管します。

  2. 請求締め日から一週間以内に封筒に保管されている請求書を取り出し、見積書、納品書とチェックし請求金額が正しいかどうか確認します。請求書が間違っていたら先方へ連絡し、正しい請求書を改めてもらいます。

  3. 請求書が正しければ請求書に支払予定日をメモしておきます。支払準備の終了した請求書は、再び支払予定日まで封筒などに入れて保管します。

  4. 支払予定日に支払済となった請求書は支払済印を押して請求書綴りに貼付します(二重支払の防止)。従って封筒に残っている請求書は常に未払いの請求書ということになります。

(2)整理・保存は自社にあった方法を採用するようにする。

  1. 請求書綴りと領収書綴りを別々に保管する方法と、請求書とその請求に関する領収書をセットにして保管する方法があります。一般的には、請求書と領収書はそれぞれ別々に整理している方が多い。取引が少ない場合は、請求書と領収書をセットする方法も便利。

  2. 継続して購入する仕入先の場合、仕入先毎に口座を設けファイルすると、仕入先別台帳を兼ねることができ、集計表作成のうえからも便利。

5)請求書控の整理・保存

(1)請求書控は複写式のものを使うようにします。

(2)請求書控の管理

  1. 請求書控の表紙にあらかじめ通し番号を付けてから使用すること。

  2. 表紙には使用開始日付:終了日付を記入し保存する。

  3. 請求書控用紙にも、一連の通し番号を付けること。

  4. パソコンにて、請求書控を発行している場合、月別または会社別に保存します。その場合にも、一連の通し番号を付けること。

  5. 見積書、物品受領書、請求書控、合計請求書と関連して管理するようにします。

6)納品書の整理・保存

(1)納品書

  1. 送られてきた納品書にて、内容、数量等を確認します。

  2. 確認された納品書より、「仕入先台帳」に記入します。

  3. 請求書が送付されてきたら、台帳と照合し、正しいかどうかを確認します。

(2)納品書の整理

  1. 月ごとに、1冊のファイルで保管します。取引量が多い仕入先の場合は、専用のファイルを用意して保管すると処理しやすい。

7)納品書控の整理・保存

(1)納品書控

  1. 納品書控は複写式のものを使うようにする(請求書・納品書・物品受領書の3枚複写)。

  2. 「物品受領書」より、「売掛帳」に記入します。

  3. 月末に得意先毎の「請求書」をまとめ、「合計請求書」を作成し発送します。

(2)納品書控の管理

  1. 納品書控の表紙にあらかじめ通し番号を付けてから使用すること。

  2. 表紙には使用開始日付:終了日付を記入し保存します。

  3. 納品書控用紙にも、一連の通し番号を付けること。

  4. パソコンにて、納品書控を発行している場合、月別または会社別に保存します。その場合にも、一連の通し番号を付けること。

(3)見積書、物品受領書、請求書控、合計請求書と関連して管理するようにします。

8)通帳の管理

(1)普通預金

  1. 会社が小さいうちは、普通預金を極力活用します。公共料金の支払等は自動引落を利用することにより、事務作業を軽減するようにします。

  2. 通帳の記入は、動きがあった都度行うようにします。

  3. 通帳には取引内容を示すメモを残すようにします。また、振込料や差引手数料のメモを残しておくと処理する際便利です。

  4. 使用済みの通帳は、表紙に取引開始日、終了日を記入し保管します。

  5. 個人の通帳と会社の通帳を区別し、混同して利用しないようにする。

(2)通帳の保管と銀行印

  1. 会社実印と銀行印は社長自ら保管すること。

  2. 通帳、小切手帳、手形帳は金庫に保管し、銀行印と別々に保管すること。

9)当座預金照合表の管理

(1)当座預金照合表

  1. 当座預金照合表は定期的に取引銀行から送付されてきます。

  2. 当座預金の残高を性格に把握するためには、当座預金出納帳を作成するようにする。

  3. 当座預金照合表と会社の当座預金出納帳を比べてみて残高が一致しているかどうかを確認します。

(2)銀行残高調整表

  1. 銀行残高調整表は、会社の当座預金出納帳残高と銀行側の当座預金照合表残高との間で生じるズレを把握し、正確な残高を知るために作成します。

  2. 銀行残高調整表は、月末残高が不一致の場合毎月作成するようにします。

  3. 期末決算では、当座預金照合表と当座預金出納帳との照合は必ず行うようにします。

  4. 期末決算では、必ず残高証明書を入手するようにする

10)手形帳(控)の管理

(1)支払手形

  1. 手形帳(控)の表紙に使用開始日、終了日を記入し保管します。

  2. 手形を振り出すときは、控えに日付、金額、相手先、支払期日、取引内容を記入すること。

  3. 手形の押印は、社長自ら行うこと。

  4. 書き損じた場合、手形番号を切り取り、控えに貼付し、断裁して破棄するようにします。

  5. 支払手形記入帳を作成し、期日管理を確実に行うこと。枚数が多い場合は、決済期日別、銀行別に決済金額一覧表を作成するようにする。

(2)受取手形

  1. 受取手形記入帳を作成し、期日通りに決済されたのか、銀行割引にしたのか、裏書きにしたのかなどを記録しておきます。手形の件数が少ない場合は、手形をコピーする方法が便利。

  2. 割引手形の場合、割引計算書を入手すること。

11)小切手(控)の管理

(1)小切手

  1. 小切手帳(控)の表紙に使用開始日、終了日を記入し保管します。

  2. 小切手を振り出すときは、控えに日付、金額、相手先、取引内容を記入すること。

  3. 小切手の押印は、社長自ら行うこと。

  4. 書き損じた場合、小切手番号を切り取り、控えに貼付し、断裁して破棄するようにします。

  5. 小切手で支払った時は、領収書に「小切手払」とメモをしておくと経理処理の時に便利です。

(2)当座預金出納帳

  1. 当座預金出納帳を作成し、残高を把握すること。

  2. 月末に銀行残高調整表を作成し、当座預金照合表と当座預金出納帳との不一致を調整します。

12)借入明細表の管理

(1)銀行などの金融機関から借り入れした場合、利息計算書、返済予定表等が交付されます。

  1. 返済計画表により、利率、月々の元金返済額、利息額、借入金残高、最終返済年月などが確認できます。変動金利の場合、金利が変わる毎に送付されますので、紛失しないように保管します。

  2. 利息の支払いに当たっては、利息計算書が作成され交付されます。専用のファイルを作成し保管するようにします。

(2)保証料

  1. 信用保証協会の保証料は、長期の借入金に対して支払われる場合、長期前払費用になることから、計算書にて確認すること。

13)棚卸表

(1)棚卸する資産が次の通りです

  1. 商品、製品、仕掛品、原材料等

  2. 貯蔵品(まだ使用していない包装材料、燃料、事務用品等の消耗品や固定資産とならない工具、器具、備品など)

(2)棚卸の方法

  1. 棚卸は、まず、商品などや消耗品などの種類、品質の異なるごとに数量を調べます。

  2. 単価の設定は、税務署に届け出ている評価方法により評価します。評価方法を届け出ていない場合は、最終仕入原価法(期末に一番近い時期に仕入れた仕入単価)により評価します。

(3)棚卸表の作成

  1. 棚卸が終わったら「棚卸表」を作成します。

  2. 棚卸資産の数量などを記載したメモなどの原始記録は、棚卸表と一緒に保存しておきます。

14)契約書・議事録等

(1)売上伝票・レジシート

  1. 日毎に、月毎にまとめて保存します。

  2. 現金売上、掛売上を区分します。

(2)契約書

  1. 重要な契約書等は、原本を別途保管しておきます。

  2. 契約書ファイル・保険証券ファイルなどを作ることをおすすめします。

(3)議事録

  1. 株主総会、社員総会、取締役会等の議事録は必ず作成し保存しておくこと。

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