書面添付制度

【1】書面添付とは

書面添付制度とは、申告書を作成する過程で計算し、整理し、相談に応じた事項を明らかにした書面を申告書に添付し、税務の専門家である税理士の権利としてその申告が誠実に行われていることを積極的に示す制度をいいます。
意見聴取制度とは、その書面を添付した税理士の立場を尊重し、税務調査を行う前に意見を述べる機会を与えられる制度をいいます。

この税理士法第33条の2の書面を提出することにより、調査の要否の判断等に積極的に活用されるほか、事前通知前の意見聴取の結果によっては、帳簿書類の調査に至らない場合もあります。
なお、書面添付を実践した税理士は、その書面に記載した事項等に虚偽の記載をした場合に税理士法第44条に規定する懲戒処分があり、その責任を背負って書面添付を実践しています。

【2】書面添付制度の趣旨と効果

1.税理士が担う公共的使命の具体的表現

申告納税制度の下における納税者は、国民を主権とした国家社会の維持・存続に必要な費用である租税を担う主人公であり、当然に適正な申告・納税を果たす義務があります。
一方で、税理士は、税理士法第1条において憲法第30条にある納税義務の適正な実現を図るとする極めて重大な公共的使命を持っています。それは、納税者の立場及び税務当局からも独立した公正な立場において、税務の専門家として租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るとする使命です。
書面添付制度は、税理士法第33条の2で税理士に付与された権利の一つで、納税者に対して法令に基づく適正な納税義務を実現させるために、税務に関する専門家としてその公共的役割を真に実現する意味での具体的行動と言えます。すなわち、書面添付は、いわば適正な申告納税制度を確立させるための担保であり、その申告が誠実に行われているという品質を保証するものなのです。

2.事前の意見聴取制度の拡充(新書面添付制度)

税理士が税理士法第33条の2の書面を申告書に添付して提出した者に対する税務調査については、納税者に税務調査の日時場所をあらかじめ通知するときには、その通知前に税務代理を行う税理士に対してその添付された書面の記載事項等について意見を述べる機会を与えなければならない(法第35条第1項)こととされています。
その書面に記載された事項は、税務の専門家である税理士からの申告書に関する情報であることから、申告審理や税務調査の要否等の判断において積極的に活用されるだけでなく、調査の事前通知前の意見聴取の段階で調査官の不明な点や疑義が解消され、結果として調査の必要性がないと認められた場合には、納税者の事務所等に臨場して行う帳簿書類の調査に至らないこともあります。

【3】会社法規定の「会計帳簿」との関連

書面添付制度は納税義務の適正な実現を図る税理士の公共的使命の実務的な具体的表現ではありますが、税理士がその書面添付を実践するには、関与先企業においてその基となる会計帳簿等が適正でなければなりません。その意味で会社法第432条に規定する「適時に、正確な会計帳簿の作成」は書面添付制度と当然に大きな関わりを持ち、普段の会計処理、決算書の作成等における会計業務及び私たちの指導業務は相当に高い水準の品質のものでなくてはなりません。
付け加えて言えば、書面添付を行っている顧問先には「会計参与」として就任も可能となり得る。

【4】書面添付の要件

書面添付の実践は、関与先企業と共に「その申告内容が税務当局から是認される程の適正なもの」であることを志向して行くことであり、当事務所では関与先企業において次に掲げる要件を最低限満たしている場合に書面添付を実践しています。

 1. 適正な決算書作成及び納税義務について経営者が十分に理解されていること。
 2. TKC財務情報システムを活用していること(遡及処理不可能)。
 3. 会計資料や会計記録が整然と完全網羅的に整理・保存され、それらが真実であること。
 4. 毎月、私たちの翌月巡回監査を受けていること。
 5. 基本約定書・完全性宣言書等の一定の書類が当事務所に提出されていること。
   (注)業種等の違いにより、上記以外の一定の要件があります。

【5】「記帳適時証明書」の発行


平成18年会社法制定により「適時に、正確な会計帳簿の作成」の義務が明文化され、巡回監査の重要度が増し、また、書面添付の普及と定着が推進されています。
そこで、TKC会員税理士は、巡回監査の実践を客観的に証明する書面として、「会計帳簿作成の適時性(会社法432条)と電子申告に関する証明書(記帳適時性証明書)」を関与先企業に提出しています。

適時性証明書は、

  1. 関与先企業の会計帳簿及び決算書、法人申告書の作成に関して、会計帳簿が会社法第432条に基づき、適時に作成されていること
  2. 毎月、関与先企業を訪問して巡回監査を実施し、月次決算を完了していること
  3. 決算書は会計帳簿の勘定科目残高と完全に一致しており、別途に作成したものではないこと
  4. 法人税申告書が決算書に基づいて作成され、申告期限までに電子申告されていること

を証明するものです。

これは、過去の会計データの遡及処理(追加・修正・削除)を行うことができないTKC財務会計システムの特徴から発行されるもので、第三者である(株)TKCが証明するものです。

【6】税理士法規定及び会社法規定

1.税理士法第33条の2(計算事項、審査事項等を記載した書面の添付)

「税理士又は税理士法人は、国税通則法第16条第1項第1号に掲げる申告納税方式又は地方税法第1条第1項第8号若しくは第11号に掲げる申告納付若しくは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書を作成したときは、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。」(第2項、第3項省略)

2.税理士法第35条(意見聴取)

「税務官公署の当該職員は、第33条の2第1項又は第2項に規定する書面(以下この項及び次項において「添付書面」という。)が添付されている申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、当該通知をする前に、当該税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し意見を述べる機会を与えなければならない。」(第2項、第3項、第4項省略)

3.会社法

第431条(会計の原則)株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
第432条(会計帳簿の作成及び保存)
1.株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2.株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

【7】書面添付・意見聴取に関する国税庁リンク

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